米百俵賞受賞KOME 100 AWARD
第21回米百俵賞受賞(2017年6月15日表彰)
受賞団体 NPO法人 障がい者相互支援センターMCP(福岡県太宰府市)
聴覚障害を持つ学生は、口唇読みとりや筆談、手話で生活に必要な会話をすることができても、学校の授業などで使われる、学習言語及び書記日本語の理解や、使い方においては、非常なハンディキャップを負う。また、通常学級や大学で聞こえる学生と共に学ぶ聴覚障害児・学生は音で進む授業が分からず、授業参加が厳しい現状にある。
そのような状況を実際に、身近な友人や後輩たちに感じ、自らも授業参加に悩んでいた障害を持つ学生(同法人 理事 山口沙希)と、「ノートテイク」などの支援者であった学生(同法人 事務局長 本田いずみ)を中心に、障害の有無に関わらず共に学べる環境づくりを支援したいという思いから、大学卒業後、障がい者相互支援センターMCPを設立した。
障がい者相互支援センターMCPでは、聴覚障害学生が健聴学生と同等の授業を受けることが出来るように、大学の講義におけるノートテイク及びパソコンテイク支援者を育成するための「ノートテイク講習会」や「パソコンテイク講習会」など、情報保障に関する講座を九州地域の大学にて開催している。
ノートテイク、パソコンテイク講習会では、障害を持つ学生を支援しようと、これまでのべ約250名の学生や職員が参加。支援を受けている学生は授業参加が可能となり、国家資格へ挑戦するなど学ぶことができていることを実感している。
大学に進学する障害を持つ学生が少ないため、進学率の向上を目指し、学習支援教室「みこクラブ」を開催。書記日本語を学び、基礎学力の定着を進めている。音から情報を得られない聴覚障害者の言語習得は、特に生活言語から学習言語への移行が困難なため、教科の学習だけではなく、日本語、物の名前、挨拶など日常生活で必要となる読み書きやコミュニケーションを中心に相手に合わせた方法を用いて筆談や手話、身振りなどで教えている。また、学習と社会体験で社会性を養う「みこキャンプ」も開催している。
学習支援教室では、これまでのべ59名の障害児・者を支援。進学することを諦めることなく、自分の行きたい進路先を希望し、高校に5名、大学に3名が合格している。また、今まで引きこもりだった大人の聴覚障害者が、学習支援教室に通い始めたことをきっかけに就業を実現し、社会復帰につながった。
障がい者相互支援センターMCPの活動は、聴覚障害児・者のための学習支援及び大学などでの講義における情報保障への支援を通じて、障がいの有無に関わらず共に学べる環境づくりを支援している。