米百俵未来塾

150年の時を超えて現代版「国漢学校」

開催の様子

米百俵未来塾第5期生修了式

第6回講座終了後、米百俵未来塾の学びをとおしてたくましく成長した塾生の修了式を開催しました。
修了式では、米百俵財団の水流理事長による主催者代表あいさつに続き、米百俵未来塾の羽賀塾長から、塾生への想いが込められた修了証書が授与され、塾生に対し激励のメッセージが贈られました。
塾生代表のことばでは、田村さんが未来塾で心に残った講座や参加する前と後での気持ちの変化、未来塾が指し示す“未来”の意味について発表しました。
第5期生の皆さんが、これからさらにチャレンジを続け、未来を切り拓いていくことを願っています!


▲水流理事長のあいさつ
「講座が進むにつれて、次第に、自信を持って自分の考えを伝える姿や、発表する際の堂々たる姿勢が見られるようになりました。第1回の講座とは全く異なる、成長した姿が見られたことを嬉しく思います。」
「ここで経験した「自分で考える」「自分の言葉で伝える」「相手の考えを聞く」「お互いのアイデアを重ね合わせる」といった協働の取り組みは、学生の間だけではなく、大人になってからもずっと大切なことです。よりよい社会をつくることにもつながっていきます。皆さんが考え、実行したことが、皆さん自身、そして周りの人の人生を豊かにすることにつながったら、素晴らしいことだと思います。」


▲修了証書授与


▲羽賀塾長からの激励メッセージ
「一人ひとりが本当にかけがえのない存在で、皆さんにしかない才能があると思います。好きなことを見つけてください。好きだから努力ができる、努力ができるから得意になる、そういう積み重ねをどんどんしてほしいと思います。」
「そして、今を生きるだけでなく、10年後の自分はどんな人間として社会に立っていたいのか、どんな風に人と付き合っていきたいのか、未来を自らデザインして生きていくことが大事です。これからも、興味が湧いたり心が動いたら、自らの学びに置き換え、とことん自分が納得するまで勉強してみてほしいと思います。」


▲塾生代表のことば
「第1回講座では、知り合いも少なく、不安と緊張でいっぱいでした。ですが、講座で学んでいくうちに『もっと知りたい』という気持ちが高まっていきました。羽賀塾長の『勉強は自らが参加するものであり、与えられたものではない』という言葉が、特に心に残っています。自ら意欲的に学び、自ら考える姿勢をとることが、本当の勉強だという事がわかりました。」
「将来AIが49%の仕事を担うと言われているなか、これまで以上に、自ら考え感じていくことが大事です。それを学ぶ事が、この「未来塾」の意味だと気づきました。先生方、未来塾に関わって下さった皆さま、塾生のみなさん、一緒に学べてとても楽しかったです。ありがとうございました。」


▲集合写真

第6回講座「未来の自分を探そう!~米百俵未来塾を振り返って~」

最終回となる第6回講座では、これまでの米百俵未来塾を振り返り、さまざまな講座をとおして学んだことをグループごとにまとめ、共有しました。そして、米百俵未来塾で得たことを未来の自分にどのように活かしていくかを考えました。
●講座の振り返り
はじめに、第1回から第5回までの講座のポイントやキーワードについて、スライドを見ながら振り返りました。
●グループワーク①「米百俵未来塾を振り返る」
これまでの講座をとおして心に残ったこと、学んだことは何かを塾生同士で共有しました。塾生は、「『米百俵』の精神などの長岡の歴史を広めていきたい」、「未来の長岡のまちを予想し、考えることが楽しかった」、「自分の考えと人の考えを合わせると新しい発想が生まれることがわかった」など、長岡の歴史や伝統、文化を学び、様々なことを体験するだけでなく、そこに込められた人の想いから学びとったことが語られました。
また、「いろいろな国の言葉を学んでたくさんの人たちと話せるようになりたい」、「オリンピック銀メダリストの中村真衣さんのように、苦しい時も壁を乗り越えられる自分になりたい」など、各講座で学んだことを話し合いました。
●グループワーク②「未来の自分を探そう」
グループワーク①で話し合ったことを踏まえて、「未来塾に参加して自分がどう変わったか」、「未来塾で学んだことをどう活かしていきたいか」を話し合いました。
●グループワークの発表
グループワークで話し合ったことを一人ひとりが発表しました。「将来の自分を真剣に考えられる自分になった」、「人前で発表することが得意になった」、「小林虎三郎が未来のことを考えていたように、先のことを考える自分に変わった」など、塾生は、未来塾をとおして自分が成長していることを実感している様子でした。
また、「苦手なことからも逃げ出さずに、失敗を恐れずに積極的にチャレンジしていきたい」、「一人ひとりに丁寧に教えられる先生になりたい」、「この講座を通して視野が広がった。将来はたくさんの人の立場に立って物事を考えられる人になりたい。」など、未来に活かしていきたいこと、これから頑張っていきたいことなどを発表しました。
●荒木コーディネーターによるまとめ
コーディネーターの荒木先生から、グループ発表の総括と塾生へのメッセージなど、まとめの話がありました。荒木先生は「夢や希望を持つこと、新しい自分に変わっていくことのすばらしさが感じられる発表でした。また、自分の考えとグループの仲間の考えを付け足しながら考え、仲間とともに磨き合うことのすばらしさを実感した塾生も多かったのではないでしょうか。」と総括され、「『米百俵』の精神を学ぶとは、過去を学ぶことではなく、未来の自分を考えることです。」、「社会は大きく変わっていきますが、自分自身で考えて、自律的に生きていってほしいと思います。」、「広く学ぶことで本当に大事なことがわかってくることを実感したのではないでしょうか。様々な講座での体験を通して、好きなものや興味のあるもの、新たな考え方を見つけたり、好きなものへの取り組み方を学んだことで、自分自身を好きになっていくことを実感できた人もいたのではないかと思います。自分の良さや、磨けばもっとよくなる部分を探して、さらに自分を好きになっていってほしいと思います。」、とまとめのお話をいただきました。
●高橋先生からのメッセージ
また、荒木コーディネーターのサポート役の高橋先生からは、これまでの講座の様子やグループ発表の様子を見てきて感じたことのお話や、塾生への応援のメッセージがありました。「人には誰しも開花されるのを待っている才能があります。自分の得意なものや『なりたい自分』を見つけ、追い求めて、上手に伸ばしていってほしいと思います。」「この塾で学んだ『米百俵』の精神とは、歴史の勉強ではなく、まさに未来を考えるためのものなのです。最初のころと、『なりたい自分』が変化した人もいると思いますが、各講座で自ら真剣に学んで心が動いたから、変化があったのです。この講座を通して考えたことや挑戦したこと、それ自体がみなさんの宝物であり、成長なのです。今を一生懸命生き、本気で考えて行動することが大切です。自分の夢を大切に育て、磨いていってほしいと思います。」「未来塾でともに学んだ仲間、講師の方々に感謝の気持ちを持ち、ここで学んだことに自信を持って、自分自身の次の課題に挑戦していってほしいと願っています。みなさんの未来に期待しています。」とのお話がありました。
●荒木先生からのメッセージ
最後に、荒木先生から塾生に向けて激励のメッセージが贈られました。
「努力したからといって、必ず成功するとは限らない。でも、成功する人は、努力をしてきた人である。」
「夢の実現のために、数々の失敗や挫折を乗り越え、チャレンジをしてきた人である。」
「努力とチャレンジによって道は開かれる。」


▲グループワークの様子

▲グループワークの様子


▲グループワークの様子

▲グループワークの様子


▲グループ発表

▲グループ発表


▲グループ発表

▲グループ発表


▲高橋先生からのメッセージ

▲荒木コーディネーターによるまとめ

 

第5回講座 オリンピック銀メダリスト 中村真衣さんから学ぶ「~人生山あり谷あり~ 人生は出会い!!」

〔講師:オリンピック銀メダリスト 中村真衣さん〕

 

第5回講座では、オリンピック銀メダリストの中村真衣さんから「~人生山あり谷あり~ 人生は出会い!!」について、講演いただきました。
また、塾生一人ひとりが『夢グラフ』を書くことでこれまでの道のりを振り返り、『うれしかったことや、つらいと思ったこと』について発表し、中村真衣さんからこれからの人生への激励のコメントをいただきました。

●~人生山あり谷あり~ 人生は出会い!!
まず、競技を通じて中村さんが歩んできた山あり谷ありの道のりと、大切にしていることをお話しいただきました。背泳ぎの選手となった意外な経緯や、競技人生の栄光と挫折、世界での活躍の裏側にあった家族との絆、中越大震災の経験、アスリートとしての復活について、当時撮影された貴重な映像を交えながら、聞くことができました。
「真のアスリートの負けは、戦うことをやめること」といった言葉をきっかけに、世界トップの舞台に返り咲いた経験も語られ、塾生のみなさんは、真剣に聞き入っていました。塾生のみなさんはそれぞれ、今頑張っていることやこれから頑張ろうとしていることがあります。講座終了後に振り返りシートを書く場面では、この言葉を胸に、頑張ることを続けてみようという決意を書く塾生も多くいました。

●夢グラフを書いてみよう
※夢グラフ・・・人生の時系列(横軸)に沿って、その時の調子(縦軸)を表す折れ線グラフ
次に、グループに分かれて、塾生一人ひとりが「夢グラフ」を書いてみました。中村さんも各グループを回り、一人ひとりの「夢グラフ」を見ながら、これからの人生を励まし、勇気づける言葉を掛けてくださいました。
これまでの人生の中で、家族や友達が支えてくれたこと、馴染めなかった環境に適応できたこと、練習によってスポーツ技術が成長したことなどの経験が、塾生から語られました。
それに対して、
「その逆境をのりこえた経験こそが、挫折や苦境を乗り越える力が現にあることの証なのです。」
「そして、今、自分のこれまでの弱みを、人に言えるということは、向き合って乗り越えた証拠で、次のステージに進んでいる証拠なのです。」
「みなさんが書いた人生グラフには山もあり谷もあったはずです。みんな谷を越えてきているのです。みんな谷を乗り越える力を潜在的に持っているのです。そして、谷を乗り越える経験は、みなさんのこれからの人生に良い糧になっています。」
「ずっと山の人はいません。頑張っても、うまくいかない時もあります。でも、時間が経った時に、谷の時があったからこそ今の自分があるんです。」
と中村さんから子どもたちへ伝えられました。
また、「夢グラフ」は何年か経って書くと、自分の成長に伴って視野や視点が変わることで、今のグラフとは異なるものとなっているのだそうです。かつては最低だと思っていた時期が、振り返ってみるとそうでもなかったり、今の自分の糧になっていることがわかり、勇気をもらえるのだそうです。
「大人になっていくにつれて、嫌なこともつらいこともある。でも、谷があるから、山がある。そして、谷のままの人はいないし、必ず上がって山になる。」
「それに、人生に正しい道はない。人と比較する必要もないし、隠す必要もないのです。」

●まとめ
最後に、中村さんから、夢や目標を持つことの大切さや、子どもたちへの願いが語られました。
「夢や目標を持っている人もいると思います。夢を叶えるためにどうしたらいいか、よく聞かれますが、私にもわからないのです。私も目標を達成できなかったので、その答えを知りたかったのです。」
「でも、簡単に達成できないから、『夢』なのです。」
「どれだけ本気になって頑張れるが大事です。夢や目標を100%叶えられる人はいません。

でも、時間が経った時に、あの時ものすごく頑張ったからこそ今の自分がある、と思えるので、勇気を持ってたくさんチャレンジしてみてください。そうすれば君たちの可能性はどんどん広がります!」


▲“人生山あり谷あり”の講演

▲“人生山あり谷あり”の講演

▲“人生山あり谷あり”の講演

▲“人生山あり谷あり”の講演

▲オリンピックのメダルを間近で

▲オリンピックのメダルを間近で

▲夢グラフを作成

▲夢グラフを作成

▲夢グラフを作成

▲夢グラフを発表

▲夢グラフを発表

▲集合写真

第4回講座「デザイン思考ワークショップ」

〔講師:長岡造形大学大学院 板垣 順平 准教授、同大学学生のみなさん〕

 

第4回講座は、『デザイン思考』を体験する講座を開催しました。
この講座の中では、レゴブロックや画用紙などを使って「未来の長岡のまち」の制作を行いましたが、『デザイン思考』のプロセスに基づいて“視点や発想の転換”を途中で行い、住む人のニーズに応えられるように、まちの人にインタビューをし、各グループで話し合って工夫しながら進めました。

 

●デザイン思考とは
はじめに、講師である長岡造形大学の板垣先生から、『デザイン思考』とはどういった考え方なのか、についての説明がありました。
『デザイン思考』とは、【①きょうかんする】→【②かだいを発見する】→【③アイディアをいっぱい出す】→【④アイディアをカタチにする】→【⑤アイディアを確かめてみる】という五つのプロセスを通じて、相手の人の立場になって、困りごとなどを解決する考え方です。
デザイン思考において特に大切なことについて、板垣先生からアドバイスがありました。
「自分で考えたことを発表するだけではなくて、自分以外の人はどう考えているのかを知ったうえで、改めて自分はどう考えるのか、何が必要なのかを考えるということが大切です。」
「困りごとなどには理由や原因があって、それを相手と話して聞いてみることが大切です。それによって、【かだいを発見】することにつながります。」

 

●レゴブロック等で「未来の長岡のまち」を制作
まず、グループで話し合って、自分たちの思い描く「未来の長岡のまち」を制作しました。
『新しいお店』、『おいしい飲食店』や楽しく過ごすための『娯楽施設』など、塾生が未来のまちに望む施設が制作されました。また、豊かな『自然』を作り込むなど、各グループの創意工夫が見られました。

●まちの人へのインタビューで、他の人の意見を聞く
次に、各グループごとに、「未来の長岡のまち」についてのインタビューをしました。
ミライエ長岡来館者の方々に、長岡の「良いところ」「良くないところ、ふべんなところ」「どんな未来のまちを望むか」を聞きました。塾生のみなさんは積極的にインタビューをし、各グループともに2~3人の方からお話を伺うことができました。『賑わいのあるまちであってほしい』『各合併地域間の交通の利便性が課題』『大雪の日も移動しやすいまちがよい』など、まちのひとの想いも聞かれ、インタビューでいただいた具体的な回答は、後述の「まちのリニューアル」と「グループ発表」に大いに活かされました。

●インタビューを踏まえて、「未来の長岡のまち」をリニューアル
まちなかインタビューを経て、「未来の長岡のまち」制作において、視点と発想の転換が行われました。
まちなかでインタビューした内容をもとに「足りない施設は何か」「作り替えた方がよい部分はあるか」を各グループで話し合いました。そして、各グループともに、インタビューを踏まえた“困りごとの解決”や“望みの実現”のために、住む人の気持ちになって考えて作り替え、「未来の長岡のまち」を完成させました。

 

●「未来の長岡のまち」発表
各グループによる発表では、インタビューでの『遊び場や賑わいの場を増やしてほしい』との声を受けての「遊園地」、「水族館」や「温泉」の追加や、『雪が多くて過ごしづらい』との声を受けての「雪を吸い取って減らし、浄化して再利用する新しい浄水場」の追加など、まちの人の困りごとを解決するための創意工夫が見られ、発想の柔軟さや鋭さに驚かされました。

また、SDGsの一環として「ソーラーパネル」を複数設置して持続可能な未来を支える施設をつくったグループや、電線を地下に通して「無電柱化」したうえで「地下鉄」や「空港」をつくったグループもありました。

中には、『学校』などの教育機関を制作したグループがありましたが、これらは、『未来のまち』のまた次の未来を生きる子どもたちを育てるものです。まさに国漢学校の考え方として、「米百俵」の精神に通じるものでした。

そのほか、『交通機関が少なくて移動がしづらい』との声を受けて、長岡の偉人の名前を冠した「長岡の歴史と偉人の考え方を学べる駅」をつくり、モノレールのように建物や道路に干渉しないよう空中にレールを通すことで、交通の利便性と歴史の継承を実現する施設をつくるユニークなアイデアを発表したグループもありました。

また、『長岡産の食べ物はとてもおいしい』との声を受けて、大型店舗の建設をするのではなく、長岡産の食べ物が売られている「商店街」をまちの中につくったグループもあり、とても考えさせられる内容となりました。

 

未来のまちのために必要なものは何なのか、塾生のみなさんだけではなく大人から見ても、たくさんのヒントが詰まった講座となりました。

塾生のインタビューに温かく応じていただきましたミライエ長岡来館者のみなさま、互尊文庫図書館スタッフのみなさま、子どもたちの学習にご協力いただきまして誠にありがとうございました。

 

▲デザイン思考のお話

▲アイスブレイクはタワーの高さ競争

▲アイスブレイクはタワーの高さ競争

▲「未来の長岡のまち」について話し合い

▲「未来の長岡のまち」について話し合い

▲まちの人にインタビュー

▲まちの人にインタビュー

▲まちの人にインタビュー

▲まちの人にインタビュー

▲まちの人にインタビュー

▲完成したまちについて発表

▲完成したまちについて発表

▲完成したまちについて発表

▲完成した「未来の長岡のまち」

▲完成した「未来の長岡のまち」

▲完成した「未来の長岡のまち」

 

第3回講座「世界の言葉で自己紹介をしてみよう!」

〔講師:長岡市国際交流センター 羽賀 友信 センター長〕
〔留学生講師:サージダさん(ヨルダン)、ムハンマドさん(インドネシア)、ハリウンさん(モンゴル)、シェハニさん(スリランカ)、セリーンさん(セネガル)〕

 

第3回講座では、留学生5名の方から教えてもらいながら、「自分の名前」と「自分の住んでいるところ」について、アラビア語、インドネシア語、モンゴル語、シンハラ語、フランス語で、それぞれ自己紹介をしました。

 

●世界中を自転車でめぐっているスイスのパッシュファミリーを動画で紹介
世界中を自転車でめぐっているスイスのパッシュファミリー(令和5年7月に長岡に来訪)が来日した際に、日本語で自己紹介をしている場面が動画で紹介されました。その自己紹介は、世界で仲良くなるためのあいさつの仕方について、大切な要素が詰まっているものでした。このような世界でのあいさつの仕方について、国際交流センター 羽賀センター長からお話をお聞きしました。

 

●国際交流センター 羽賀センター長のお話「世界で仲良くなるために大切なこと」
これまでに紛争地など安全ではない地域で難民を助けるなど、国際協力の仕事で66カ国を訪れた経験から、世界で仲良くなるために最も大切なことはなにか、をお話しいただきました。

「世界で仲良くなるために最も大切なことは、『あいさつ』です。」
「ただし、『あいさつ』は、ただすればよいというわけではありません。心のこもっていないものは、『あいさつ』ではありません。例えば、横を向きながら『あいさつ』をしても、それは失礼にあたります。」
「大前提として、【正面を見て、顔を見て、はっきりと相手に伝わるように声を出すこと】が大切です。」

 

次に、『あいさつ』をするうえで大切な3つのポイントをお話しをしていただきました。

 

「あいさつのポイント1つ目は、【相手の言葉であいさつをすること】です。

「例えば、今日先生として来られている留学生のみなさんは何カ国語も話せると思います。日本以外の国々では、同じ国なのに言語が変わったり、民族が変わったりということは、当たり前のことなのです。」
「塾生のみなさんは学校で英語を学んでいると思いますが、実は世界に出ると英語が通じるところがすごく少ないのです。そういった地域で大切なことは、相手の言葉であいさつをすることです。」

「相手の言葉であいさつをすると、『この人は我々の側と関わろうとしている人だな』と思われ、『敵ではないですよ』というメッセージになります。」
「相手の言葉で挨拶をすることは、相手の立場に立って相手を尊重し、相手に近づこうという意思表示になるのです。」

 

「あいさつのポイント2つ目は、【ニックネームで名前を覚えてもらうこと】です。」

「みなさんの名前を説明しても、相手は文化の物差しが違うので、すぐに覚えてもらえません。
正式な名前を名乗ったあとに、『こう呼んでください。』と相手がすぐに覚えられるニックネームを加えればよいのです。」
「例えば、英語圏の場合は、ローマ字3つで表すものは、うまく発音できません。
そのため、トウキョウはトキオ、キョウトはキヨト、と発音されるのです。
相手目線で発音しやすいニックネームを考えるのもよいですね。」

「私がアフガニスタンを訪れた際に、公用語であるダリー語でよいニックネームはないか、と現地の大学の先生に相談したことがあります。
ダリー語では、[h]の発音は消えます。
よって、[haga]の発音は、『ハガ』ではなく『アガ』になります。
そして、現地の言葉で『アガ』は、【なんでも知っている人】という意味なのだそうです。
さらに、呼びやすくするために、【○○さん】という意味の言葉も後ろにつけ足しました。
現地の言葉で【○○さん】は、『ジャン』と言うのだそうです。
会食の席で、〔私のことは『アガ ジャン(なんでも知っている物知り屋 さん)』と呼んでください。〕とあいさつをしてみました。すると、150人ほどの会場のみなさんに覚えてもらえて、その後は本当にたくさんの人に話しかけてもらい、たくさんのお誘いをいただきました。」

「いろいろな言葉であいさつをしてみるとわかるのですが、発音はもとより、国によって異なるあいさつがあり、それぞれ文化の特徴が表れています。中には、宗教がベースとなっているあいさつもあります。」
「また、世界では、日本のような[苗字+名前]といった氏名だけではありません。[名前+名前+名前+名前]のように長い名前の人もいれば、ミャンマーのように[苗字と名前が一体化]している人もいます。」
「世界の文化は、あいさつを理解するだけでも、多くのことを知れるのです。」

 

「あいさつのポイント3つ目は、【『この人はおもしろい』と思ってもらうこと】です。」

「おもしろいと思ってもらわなければ、あいさつの意味は半減してしまいます。
名前までを覚えてもらえたら、今後もお付き合いしていきたいと思ってもらうようにするのです。
人と同じあいさつをせずに、飽きさせないことが大切です。」
「いろいろな国に行った際に、相手から見れば、こちらが日本人であることはもうわかっています。
そのため、『日本から来ました』とは言いません。」

「例えば、
『トウキョウという首都から北に1時間半の弾丸列車で行ける、人類が住んでいて最も雪の量が多い、【雪国】と呼ばれるところから来ました。』
と紹介します。
そうすると、『どのくらい降るんですか?』という質問をされます。
私は、『(山古志村で)4.5mの雪が積もります。』と答えます。
続いて、『えぇ!!車はどうやって走るんですか?』という質問をされます。
それには、『消雪パイプと呼ばれるものがあります。』と答えます。
と、あいさつから会話が続くのです。
相手からクエスチョンマークがいっぱい出るような自己紹介をすることが大切です。」

 

次に、あいさつが育てる『共感力』について、お話いただきました。

「相手の言葉の発音、相手の国の概要、何を大事にしている人たちか、宗教は何だろう、どんな民族があるのだろう、と調べて理解しておくと、共通の話題ができていきます。
【国際交流とは、違いを探すことではなく、共通点を探すこと】です。
『言葉』は、その第1歩ですよね。」
「【相手の国のことを理解して共通の話題をつくりながら、自分のことも理解してもらうこと】が、世界の言葉でのあいさつの大きな意義です。」
「そして、理解をしてもらうということは、【納得をしてもらう】ということです。
相手から『あなたの言っているお話の意味がわかった。』と思われることではありません。
『そのとおり』と思ってもらうことなのです。
この2つは明らかに違うのです。」

「このように、あいさつにおいて相手の目線に立って考えて理解するということは、『共感』するということです。あいさつは『共感力』を育てます。
「その逆の言葉があります。『同情』です。[自分の優位な立場から心だけで思って、実際には動かない自分を納得させる]という言葉です。これは、全く違いますよね。」
「あいさつでは、『共感力』の方をはたらかせてほしいと思います。そして、相手にどういう印象で伝わるかを意識してほしいと思います。」
「たかがあいさつと思われがちですが、あいさつがきちんとできれば、コミュニケーションは8割が成功していると言えるのです。」

 

さらに、紛争地の現状と、視点の多様化についてもお話しいただきました。

「アフガニスタンという大紛争地の国では、国民の7割が飢えています。それに対応できるお金もなく政治も不安定で、さらに雨が降らずに農業がうまくいかないことも多々あります。
そして、この飢えている7割の国民の中で一番深刻なのは、子どもたちです。
みなさんが「おなかがすいた」という感覚とはまったく違うのです。
多くの子どもたちが「飢餓」の状態にあります。栄養がとれずに、ひどい栄養失調となることで、脳に損傷を負い、生涯続く疾患を抱える子どもが増加しています。」

「日本は食べられないどころか、食べ過ぎでダイエットのCMがいっぱい流れています。
これは、世界から見ると、変ですね。
相手の国の言葉であいさつができて、世界の目線で見えるようになってくると、当たり前と思っていたことが、違った見え方になってきます。
これはとても大切なことです。」

 

「現在も、世界から留学やお仕事で日本に来ている人が、たくさんいます。
みなさんも大人になっていくと、いろいろな国の人たちと出会うと思いますが、
その時はぜひ、今日聞いて体験したことを思い出して、活用してほしいと思います。」

「それでは、今日は留学生にたくさん質問をしながら、世界の言葉であいさつをしてみましょう。今後、新たにいろいろな言葉にアプローチをするときにも役に立ち、とても自分を成長させることができます。」
「あいさつをする時は、もちろん『笑顔』の役割も大切ですよ。」

 

世界で仲良くなるためのあいさつの大事なポイントがわかり、また、紛争地のお話では『日本で当たり前のことが、世界では当たり前ではない』ということを知ることができたお話でした。

 

●留学生のみなさんのお話「出身国の文化を紹介」
出身国の歴史、食、音楽、ファッション、生活、環境、観光地など、日本とは異なる文化を紹介していただきました。
ヨルダンでは、家族が特に大切なものとされ、おもてなしと寛大さ、忍耐と満足、騎士道とほこりが大事な考え方とされているそうです。また、アラブ地域に伝わる人気の民族舞踊「ダブケ」の動画が紹介されました。
モンゴルでは、夏の最高気温が40℃でとても暑い一方、冬の最低気温がマイナス38℃にもなり、寒暖の差が激しいことが語られ、塾生のみなさんから驚きの声があがりました。
インドネシアでは、辛い物が特に好まれ、ラーメンのような人気の食べ物「バクソ」に、辛いソースをたくさんかけて食べることが紹介されました。また、公共交通機関である乗り合いワゴン車の「アンコット」は、降りたいところで天井をノックすると停まってもらえるそうです(地域による)。
スリランカは野生動物が特に多く住んでいて、日本ではクマが多く生息していますが、スリランカではゾウが特に多いのだそうです。
セネガルでは、一番多く使われるフランス語をはじめ、8つの言語があり、学校で話す言語と家で使う言語が違うこともあるということが語られました。
世界の国々で大切にしている考え方や生活の様子の一部を知ることができ、異なる文化の一端に触れるよい機会となりました。

 

●グループワーク「世界の言葉で自己紹介をしてみよう!」
「自分の名前」と「自分の住んでいるところ」について、世界の言葉で自己紹介をしました。

まず、世界の言葉で「自分の名前」を練習しました。
次に、留学生の出身国と長岡を対比することで、各グループで「自分の住んでいるところ」の紹介を考えました。

例えば、モンゴル語を学んだ班では、留学生への質問を通して、モンゴルの小学校は授業が午前中だけで終わるという新しい発見があり、テレビは日本と同じようにニュースやアニメが放映されているといった共通点も見つかりました。

世界の言葉での自己紹介発表では、留学生のみなさんからも感嘆の声が上がったり拍手が沸き起きるほどの上手な発音での発表もありました。
日本のように、蛇口から出る水を飲める国が世界的にも珍しいことを知り、そのことを紹介したグループや、辛い物が好まれるインドネシアの人へのあいさつとして、長岡の「かぐらなんばん」を紹介したグループもありました。
また、長岡では身長を超える雪が積もるというユニークな自己紹介もありました。
どんなことを紹介したら面白いかを探るインタビューを繰り返すことで、日本との文化の違いや共通点を見つけながら、多様性について認識し、考える機会となりました。

 

最後に、羽賀国際交流センター長から激励の言葉がありました。
「塾生のみなさんは今日、短時間でもこれほどの長いあいさつを世界の言葉ですることができました。語学について、自らの意思で勉強して発展させる力が自分にはあるのだと気付けたと思います。ぜひ今後も、自ら学びを深めていってほしいと思います。」

 

▲羽賀国際交流センター長のお話


▲留学生からの出身国紹介

▲留学生からの出身国紹介

▲留学生からの出身国紹介

▲留学生からの出身国紹介

留学生からの出身国紹介

▲グループワーク

▲グループワーク

▲グループワーク

▲グループワーク

▲グループワーク

▲世界の言葉で自己紹介を発表

▲世界の言葉で自己紹介を発表

▲世界の言葉で自己紹介を発表

▲世界の言葉で自己紹介を発表

▲世界の言葉で自己紹介を発表

▲世界の言葉で自己紹介を発表

▲集合写真

▲集合写真