第2回講座「文学座・俳優さんと楽しくトレーニング! 伸ばそう“伝える力・感じる力”」
〔講師:文学座 俳優 植田真介さん、髙柳絢子さん、日景温子さん〕
第2回講座「文学座・俳優さんと楽しくトレーニング! 伸ばそう“伝える力・感じる力”」では、文学座の俳優さんから、様々なコミュニケーションの方法をワークショップ形式で学びました。
なお、本講座は、午前グループ(24名)・午後グループ(21名)に分かれて行いました。
講座の冒頭では、『コミュニケーション』は一体どうやったらよく伝わったり感じたりすることができるか、その3大ツールを、文学座に所属する俳優の植田先生からお話ししていただきました。
「『言葉』と『手(身体)』と『目(表情)』は、コミュニケーションの3大ツールと言われています。今こうやってみんなと話している時にも、『言葉』だけではなく、『手』を動かしたり、『目線』を送ったりして、より伝わるようにしています。仲間とのあいさつでも、『手』を振りながら、『目線』を送りながら、あいさつの『言葉』を発すると、あいさつされた側も気持ちがよいものです。どれか一つでも欠けていたら、少し距離を感じてしまいますよね。」
今回は、この『言葉』と『手(身体)』と『目(表情)』を使ったゲームを通じて、コミュニケーション3大ツールの“伝える力・感じる力”を実践してみることで学びました。
最初に、塾生が2人1組になり、コミュニケーションゲームを行いました。
「『1回握る動作』だけで、“グー・チョキ・パー”を相手に伝える」
「『目で見る』だけで、“グー・チョキ・パー”を相手に伝える」
「『おはよう』と一回言うだけで、“グー・チョキ・パー”を相手に伝える」など、
限られた動作で相手に気持ちを伝えました。
全く違うものが伝わっていた塾生の驚きの声や、上手に伝わった塾生の喜びの声が沸くなか、
何回か繰り返し行うことで、相手に上手く自分の気持ちが伝わるようになっていきました。
植田先生からは、
「伝える時に『恥ずかしいなぁ』『不安だなぁ』『伝わるかなぁ』『心配だなぁ』と思ってしまうと、そのことが相手に一番伝わってしまいます。だから、“グー・チョキ・パー(=伝えたいこと)”だけを伝えようとするとよいです。思い切って伝えてみてください。」
とアドバイスもいただきました。
その後も、『手(身体)』『目』『言葉』といったコミュニケーションの3大ツールを使ったワークショップを行いました。
午前の部・午後の部ともに、塾生8~10人程度のチームをつくり、チームメイトと相談しながら、
植田先生が出すお題について、試行錯誤をしながら取り組みました。
他のチームが、自分たちのチームとは異なる切り口やアイデアで表現している様子を見て、感嘆の声が上がりました。そして、他のチームの『おもしろかったところ』や『よかったところ』『気になったところ』を伝え合って、アイデアや考え方を共有しました。そのなかで、自分たちのこだわったところに気づいてもらえた喜びも共有しました。
グループごとの打ち合わせや発表では、植田先生から
「アイデアが浮かんだらみんなで共有して、どんどん形にしてみよう。とにかくまずはやってみよう。」
「舞台でも見ている人たちに向かって演じます。だから、受け取る側に向かって、ちゃんと伝えるということを意識してやってみてください。」
とアドバイスをいただきました。
また、ワークショップ後には、植田先生から
「きっと君たちはこれから、学校や学校以外の場所で【何かをつくって発表する場面】がたくさんあると思います。何もないところから何かをつくる時に一番うれしいのは、自分にしかつくれないものができた時です。だから、自分が『こんなふうにやってみたいな』と思うことを遠慮せずに自信をもって表現してほしいと思います。
そして、【チームで何かをする・つくる場面】では、まず、『自分はこういうふうに思う』『自分はこういうふうにしたい』と言うことがすごく大事だと今日のワークショップをやりながら感じたと思います。部分的にでも、自分の考えたことがどこかに取り入れられたらうれしいものです。だから、『自分がこうやりたい』と思ったことは、必ず言うようにしましょう。
もちろん、みんなから意見がたくさん出て、どの部分に誰の意見を取り入れるかをすり合わせるのは大変です。でも、それがなかったら、誰かの言ったことをやるだけの人になってしまいます。
自分以外の人が『こうしたい』と言ったことも聞き入れて、『それはおもしろい』と思えると、もっと良いものができます。みんなで何かをつくるというのは、自分が思ったとおりにつくるということではなくて、【自分の思ったことと人が思ったことをミックス】させて、みんなの思いで他ではつくれないものをつくるということです。そのためには、コミュニケーションが大事なのです。」
との熱いメッセージをいただきました。
最後に、質問にお答えいただきました。
「緊張した時には、どのようにしていますか?」
「僕たちも舞台の前は緊張します。緊張するというのは悪いことではないと思います。緊張するということは、それだけ自分が大切に思っていることだからです。緊張するということは、それだけ周りの人の期待に応えよう、失敗したくない、という気持ちがあるからです。全く何も緊張しない人は、『まあ、なんでもいいだろう』程度に考えているからです。むしろ、緊張するということはプラスのことなので、喜びましょう。緊張することを1年間に何回経験できるかわかりませんが、多ければ多い方がいいです。いつまでも緊張することから逃げていたら、自分が大事にしていることに挑戦することができないと思うんです。積極的に緊張することをやってみると、すごく楽しい経験になるし、成長できると思います。」
「俳優さんになれる人はみんな、元から才能を持って生まれた人たちなのですか?」
「そんなことはないと思います。何よりも、お芝居をして、見ている人を喜ばせたり楽しませることが“好き”だから、この仕事をしています。そして、それがきっと世の中のためになると思っています。君たちも大人になったら何かのお仕事をすると思いますが、どのくらいお金をもらえるかでもなく、どれだけ多くの人数に影響を与えられるかでもなく、自分が『やってみたい』こと、『興味のある』ことをお仕事にしてほしいなと思います。」
「どうしてこのお仕事(俳優)をしようと思ったのですか?きっかけは何ですか?」
「人前に出るのが苦手だったけれども、小学校の学芸会のオーディションに受かって先生がほめてくれたことが、とてもうれしかったんです。その時の経験が忘れなくて、今のこのお仕事をしています。さらに、自分では覚えていなかったのですが、保育園の卒業発表会でもほめられたことがうれしくて、当時、卒園アルバムに『将来の夢は俳優』と書いていたそうです。このように、小さい時から今までの『ほめられた』『認めてもらえた』という【うれしい出来事や経験】が、大人になってから、お仕事での『やってみようかな』につながりました。あの日、あの時、の経験がみなさんの将来のきっかけになったりします。どんなきっかけがどこに落ちているかわかりません。だから、これから一日一日の出来事で『うれしかった経験』や『幸せだなと思った経験』を大切に、みなさんの宝物としてポケットに入れながら歩んでいってほしいと思います。」
など、将来やこれからの人生のためになることをお話しいただきました。
▲文学座 植田先生から、コミュニケーション3大ツールに関するお話を聞きました。
▲コミュニケーションゲームを行いました。
限られた動作の中で、自分たちが考えていることを相手に一生懸命伝えていました。
▲グループ表現『噴水』
▲グループ表現『噴水』
▲グループ表現『桃太郎』
▲グループ表現『桃太郎』
▲最後に塾生からの質問にお答えいただきました。